平成二十六年度 最優秀論文

言葉を通して自分の考えをすすんで表現し、深めることができる子の育成

〜比較を意識した対話活動と非言語情報の活用を重視した授業を通して〜

西尾市立花ノ木小学校(前幡豆小学校)教諭
天野 千佳

天野 千佳 教諭一 はじめに

本校では、平成二十三年度から「考える力を育む授業づくり」として研究をすすめている。本校の研究とつなげて、一・二年次の研究では、「仲間と運動する楽しさを味わうことができる子の育成〜ともに考え、教え合うことを通して〜」として、体育科の領域で研究に取り組んできた。

しかし、目の前の子どもたちは、技能が身についてきても、友達にどのように教えたらよいのかわからず、すすんで伝えようとしなかった。それは、話し合いの仕方や、話し合う視点が身についていなかったからだと考えられた。

そこで、三年次の研究では、言語活動の基礎となる国語科において研究をすすめることにし、できる喜びだけなく、言葉を通して自分の考えを伝え、深めることへの楽しさも味わってほしいと願い、実践を行った。

二 研究の概要

(一)めざす子ども像

  • 言葉に着目し、表現を工夫できる子
  • 自分の考えをすすんで伝え合い、考えを深めることができる子

(二)本研究の経緯

◇一年次は「仲間と教え合うことで、できる喜びを味わうこと」に重点を置き、三年体育科「ポートボール」の実践に取り組んだ。手だては以下の二つである。
①授業導入にスキルアップ運動(基本練習)、発達段階に応じたチーム練習
②アドバイスタイム、作戦タイムの設定 毎時間行ったスキルアップ運動では、レクリエーション的要素を含む活動も取り入れることで、ボール運動が苦手な子どもも楽しんで取り組むことができた。
また、基礎・基本が身についていくと、積極的に話し合う姿が見られた。

しかし、技能の高い子が一方的に教えるだけの話し合いが多く、誰もが話し合いに参加できるような手だてが必要であった。

◇二年次は、「みんなで考え、つくり上げること」を重点に置き、三年体育科「表現」の実践に取り組んだ。手だては以下の三つである。

①太鼓のリズムに合わせ、何かになりきって動く活動(変身ゲーム)
②お話を考え、身体で表現する場の設定
③ビデオを見て、練り直す場の設定

変身ゲームを取り入れることで、相手に伝わるように動きを工夫し、身体いっぱいに表現するようになった。お話作りでは、今まで変身したものを振り返ったり、新たに動きを取り入れたりしながら話し合うことができた。さらに、ビデオを見ることで、同じ動きがあることに気づき、作品を練り直すことができた。

しかし、できた作品に満足し、練り直しをしないグループもあった。教師が見直す点を明確に示し、話し合いの視点を与える支援が必要であった。

(三)研究の内容◇三年次

三年次は、六年生を担任することになった。一・二年次の課題をふまえ、「言葉を通して自分の考えをすすんで表現し、深めることができる子の育成」を主題とし、手だてとして「比較」という視点を子どもたちに意識させ、授業づくりにおいて①対話活動(外的対話・内的対話)を行うこと②非言語情報(図表・グラフ・絵・写真・身体表現・表情)を活用することを取り入れた。なお、自分の考えを伝えることに、苦手意識をもつ児童Aに着目し、以下二つの実践を行った。

(実践一)六年国語科
 「新聞の投書を読み比べよう」

①四つの投書を比べてみよう

単元の導入において、子どもたちに新聞を手渡した。「今配った新聞の中には、投書が掲載されています。一体、投書とは何かな」と投げかけると、子どもたちは新聞を広げて必死に探し始めた。新聞に載っている投書欄に気づくと、児童Aは「自分も書いてみたい」と意欲を示していた。そこで、学習したことを生かして、自分の書いた意見文を、中日新聞の投書欄(発言)へ応募することに決めると、目的意識をもって、わくわくしながら単元に入っていった。

新 聞 を 広 げ 、辞書を引く児童A児童Aの色分けをした投書四つの投書を読み比べると、児童Aは、「文章が似ていて違いがわからない。でも、スポーツのことについて書かれている」と言って、内容をあいまいにとらえていた。そこで、文章構成を教科書の本文に色分けさせた。すると、児童Aは、色分けした四つの投書をもう一度読み比べ、「投書①と③は、スポーツは楽しんでやりたいという意見」「投書②と④は、スポーツは限界まで全力で取り組みたいという意見」の二つに分かれていることに気がついた。

②理由をわかりやすく伝えよう

工夫して伝える児童A自分が最も納得する投書を選び、理由を話し合う活動を取り入れた。理由をわかりやすく伝えるために、ホワイトボードを用意し、自由に書かせることにした。児童Aは、みんなにも自分の選んだ理由を納得してもらえるように、理由を一つだけにしぼったり、強調したいところを赤色で囲んだりした。さらに、一対多対話では、ホワイトボードを相手に見せ、大事なところを指で示しながら工夫して伝えることができた。

 

③新聞に投書する意見文を書こう

書き手の工夫を読み取った子どもたちは、説得するための工夫を取り入れた意見文を書くことにした。児童Aは、サッカーのワールドカップに出場が決まった話題に目を向け、見出しを「サッカーは人々を感動させる」として意見文を書いた。また、学習で学んだ投書のよさから、具体的なデータを取り入れたいと思い、自分の主張の根拠となるデータをアンケートで集めていた。児童Aの意見文を読んだ友達からは、「意見に納得できた」「アンケートがあり、説得力があった」などの賞賛があった。

単元終了後の児童Aは、比べ読みをすることで、さまざまな情報の中から必要な情報を見つけ出すことができた。また、非言語情報を取り入れた対話活動を通して、自分の考えを伝えられるようになってきた。しかし、児童Aの発言や話し合いの様子を見ていると、うまく相手に伝わらない場面が見られ、言語感覚をさらに身につけていく必要があると感じた。

そこで、実践二では、言葉にこだわって作る俳句に目を向け、言語感覚を養うための学習を取り入れることや、話し合う視点を明確にした対話活動を取り入れて実践を行うことにした。

(実践二)六年国語科
 「思い出に残る俳句集を作ろう」

①表現の工夫を見つけよう
 (言語感覚を養うための学習)

さつまいもを観察する様子単元のはじめに、秋の季語を見つけるために校庭を巡った。その中で、俳句に取り入れたいという希望の多かった、「さつまいも」「稲」「ネコジャラシ」の三つを教材として取り入れ、実物や写真を用意した。子どもたちに虫眼鏡を渡し、観察をしてわかったことや、イメージしたこと、経験したことなどを短い言葉で付箋に書くように指示をした。児童Aは、見た目だけでなく、触った感触なども書き、たくさんの言葉を集めることができた。
しかし、最初に考えた俳句「べにあずま 中は甘いが 外まずい」では、表現を吟味し、豊かにしていく必要があると感じた。

そこで、比較を取り入れた授業「どちらがよい句」を展開することにした。ここでは、「気持ちを直接書かない」という表現の工夫を考えさせるために、二つの俳句「①夏休み さみしいけれど もう終わり」「②夏休み 石ころけとばしもう終わり」を提示し、どちらがよいかを話し合わせた。

児童Aは①を選び、その理由に「《石ころけとばし》の言葉の意味がわかりにくいから」と書いていた。全体交流では、意見が真っ二つに分かれていたが、「石ころをけとばす様子を表した絵を提示し、「どんなときに石ころをけとばすかな」と投げかけると、「くやしいとき」「気分が暗いとき」「やり残したことがあるとき」など、自分の経験にもとづいた発言が続いた。児童Aの振り返りには、「気持ちを直接書かずに、違う言葉で表すほうが、イメージがすごくふくらむと思った」と書かれており、言葉のもつ表現の豊かさに気づくことができた。

②推敲に挑戦しよう
 (話し合う視点を明確にした対話活動)

すすんで伝える児童A比較を取り入れた授業を通して見つけ出した表現の工夫(①何かにたとえる②順序を入れかえる③気持ちを直接書かない)を推敲するポイントに決め、グループで発表しながら、互いにアドバイスする一対多対話を取り入れた。児童Aは、一対多対話で、友達にアドバイスするのが苦手であるのにも関わらず、三つの観点にそって、アドバイスする姿が見られた。一方、友達のアドバイスを受け入れ、もう一度一生懸命に考えて推敲することもできた。

(推敲前)
べにあずま 中は甘いが 外まずい
(推敲後)
べにあずま 中はわたがし 外ゴーヤ
推敲した児童Aの俳句

単元終了後の児童Aは、比較の視点を取り入れることで、言葉に着目し、新たな気づきや考えを見つけ出すことができた。また、話し合いの視点を示した一対多対話を取り入れることで、自分の考えを明確にし、すすんで伝え合うことができた。さらに、友達の意見を聞く中で、自分の考えをもう一度考え直すこともできるようになった。

三 おわりに

三年間の実践研究を通し、仲間がいるからこそ学ぶ価値があることを実感させたいと思い、「考えを伝え合うこと」を重点に授業を行ってきた。その中で、充実した話し合いを行うためには、だれもがわかる話し合いの視点を与えることや、相手に話したくなる課題を与えることが必要であることがわかった。言語活動の基礎である国語科で学んだことを生かし、他教科へ広げるためにも、多くの言葉を獲得させ、話し合いの仕方を確認したり、話し合うための環境(非言語情報を取り入れた視点を与える)を整えたりしたい。
だれもが話し合いたくなる授業を展開できるように、日々の実践で取り組んでいきたい。